研究課題/領域番号 |
10555231
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 展開研究 |
研究分野 |
構造・機能材料
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
新家 光雄 豊橋技術科学大学, 工学部, 教授 (50126942)
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研究分担者 |
岡部 道生 大同特殊鋼株式会社, 技術開発研究所・特殊鋼研究部・高合金研究チーム, チーム長
川上 紀明 名城病院, 整形外科, 医長(研究職)
福井 壽男 愛知学院大学, 歯学部, 助教授 (50090147)
岡部 道夫 大同特殊鋼, 技術研究所, チーム長
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研究期間 (年度) |
1998 – 2000
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研究課題ステータス |
完了 (2000年度)
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配分額 *注記 |
12,400千円 (直接経費: 12,400千円)
2000年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
1999年度: 1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
1998年度: 9,700千円 (直接経費: 9,700千円)
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キーワード | 生体用チタン合金 / Ti-29Nb-13Ta-4.6Zr合金 / 低弾性率 / 生体融合機能性 / 細胞毒性 / 機械的性質 / 疲労特性 / 摩擦磨耗特性 / 高生体適合性 / 生体用材料 / β型チタン合金 / 医療・福祉 / 加工熱処理 / ミクロ組織 / 力学的生体融合性 / ベータ型チタン合金 / 合金設計 / 擬似生体内環境 / 腐食磨耗特性 |
研究概要 |
純金属や代表的な生体用金属材料の細胞毒性評価に関する報告を参考にして、細胞毒性の指摘の無い合金元素としてNb、Ta、Zr、MoおよびSnを選択し、これらの元素から構成され、低弾性率で高強度・高加工性が期待されるチタン合金をd電子合金設計法により設計したところ、Ti-Nb-Ta-Zr系、Ti-Nb-Ta-Mo系およびTi-Nb-Ta-Sn系の各β型チタン合金組成が得られた。これらの各組成合金のボタンインゴット(約45g)を作製し、加工熱処理を施した後、塑性加工性および基本的な機械的性質を評価したところ、いずれの合金も目標合金として期待されるがTi-29Nb-13Ta-4.6Zr合金で最も容易に強度、伸びおよび弾性率の良好なバランスが得られることがわかった。さらに、構成元素の細胞毒性評価の報告例から判断しても同組成合金が最も生体適合性に優れると予測された。そこで、Ti-29Nb-13Ta-4.6Zr合金の細胞毒性をL929細胞を用いて評価したところ、純チタンと同程度の細胞毒性を示し、同合金の生体親和性が優れることが予測された。以上から、Ti-29Nb-13Ta-4.6Zr合金に的を絞って実用化に向けての評価を行うこととした。その第一段階として、Ti-29Nb-13Ta-4.6Zr合金の実用レベルインゴットの溶解製造を試みた。その結果、高周波誘導溶解法やレビテーション溶解法を適用することにより、健全な実用レベルインゴットを作製できることがわかった。そこで、実用レベルインゴットについて、加工熱処理を施し機械的性質、疲労特性、フレッテイング疲労特性および摩擦磨耗特性を評価した。その結果、溶体化・時効処理や冷間圧延後直接時効処理等を行うことで従来より生体用として使用されてきている Ti-6Al-4V ELI合金に匹敵する強度および廷性バランス、疲労強度、フレッテイング疲労強度を得ることができ、かつより低い弾性率を得ることができることがわかった。Ti-29Nb-13Ta-4.6Zr合金につき、擬似生体内環境での摩擦磨耗特性も調査したところ、相手材にジルコニアを使用した場合にはTi-6Al-4V ELIや生体用ステンレス鋼SUS316Lに比べて、より良好な摩擦磨耗抵抗を示したが表面処理を施すことが必要との結論に達した。この処理として大気中にて加熱する酸化処理が有効であることを見出した。Ti-29Nb-13Ta-4.6Zr合金では、純チタンやTi-6Al-4V合金に比べて、リン酸カルシウム系結晶化ガラスを大気中での熱処理によりその表面に容易に被覆することができ、この表面処理により生体適合性をさらに改善できることがわかった。以上の結果から、Ti-29Nb-13Ta-4.6Zr合金の生体用材料としての実用化が大いに期待できると言える。同合金の実用化を達成するためには、今後さらなるミクロ組織制御による力学的特性の改善、磨耗特性改善のための表面処理法の確立、さらなる擬似生体内環境での疲労強度やフレッティング疲労特性の評価、生体を用いての低弾性率であることの有効性の立証等を行い、大型動物を用いての生体融合性の評価を行うことが必用であり、さらには臨床試験へと進める必用がある。本合金は、歯科補綴物への適用も期待できるため、この方面での実用化も大いに期待される。
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