研究概要 |
研究期間の研究成果は,以下の通りである. (1)窒化ケイ素を対象として,実測した欠陥(介在物・空孔)寸法のばらつきの統計的性質と,欠陥から発生する微視き裂の進展挙動の実測値を用いて,モンテカルロシミュレーションを行い,曲げ強度,疲労寿命などを推定した.その結果,セラミックスの強度のばらつきの主要因は欠陥寸法のばらつきであることを再確認するとともに,疲労寿命のばらつきの多くは,き裂発生寿命のばらつきで説明できることなどを示した. (2)窒化ケイ素を対象として,欠陥(介在物・空孔)から自然発生する微視き裂の進展特性を,単調曲げ荷重下と静疲労荷重下で測定し,すでに得られている繰返し荷重下の結果と比較し,微視き裂に対する荷重繰返しの影響を調べた.その結果,微視き裂では,長いき裂とは異なり,荷重繰返しによるき裂進展の加速は顕著ではないことを示した.この現象を,荷重繰返しによるブリッジング摩耗で説明した.また,原子間力顕微鏡を用いて荷重繰返し途中の微視き裂を直接観察し,微視き裂においてもわずかであるが,ブリッジング摩耗が生じていることを示した. (3)セラミックスのき裂発生挙動を捉える目的で,物体が破壊する時に放出される「フラクトエミッション」に注目し,「光電子増倍管」を用いたフォトン計測システムを整備した.本システムを用いて,単調曲げ試験における発光を測定した結果,窒化ケイ素,アルミナともに,破断時には非常に多くのフォトンが放出され,この放出現象は破断後しばらくの間持続することがわかった.また,窒化ケイ素においては,破断前にもフォトンが漸増する現象が観察された.予き裂材を用いた実験の結果,この漸増現象は,き裂の安定成長に起因する現象であることがわかった. (4)セラミックスなどのぜい性材料の二軸応力下における微小き裂の成長挙動を観察するための,「その場観察用二軸応力負荷試験機」を製作し,ガラスの混合モード(モードI+モードII)下におけるき裂進展試験を行った.その結果,モードIIではき裂進展下限界が消失することや,繰返し混合モード下では,き裂はみかけ上,最大せん断応力方向へ進展することなどを示した.
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