研究概要 |
数μm〜数十μmサイズにおける金属/溶液界面電気化学反応の不均一性を評価するため,従来型の走査電気化学顕微鏡(SECM)にマイクロインピーダンス法,走査液滴法,液中イオン銃などとの複合化を行った。更に,SECM自身の高性能化を図った。本研究成果の概要は以下の通りである。 1.微小白金ディスク電極(SECM測定用)に,更に微小白金黒電極対(マイクロインピーダンス測定用)を組み合わせた複合プローブ電極を作製した。複合プローブ電極をエポキシ樹脂に埋め込んだ白金箔試料(断面)に適用し,SECM測定,およびマイクロインピーダンスのラインスキャンを行った。両法ともに白金とエポキシ樹脂を識別する結果を得たが,面分解能はSECMが1桁良好であった。 2.走査液滴法(参照電極と対極を内側に備えたガラス細管から電解質溶液を試料電極表面に滴下し,走査するとともに微小領域の電気化学測定を行う)とSECM測定の併用を試みた。走査液滴法を用いたCV,インピーダンススペクトル測定の結果,多結晶金電極表面を構成する結晶が全て(111)面であることがわかった。また,走査液滴法を用いてチタン表面局部を種々の電位でアノード酸化することにより,酸化物皮膜の厚さの違いをSECM測定により評価することができた。 3.SECMのプローブ電極として用いた微小銀/塩化銀電極をカソード分極することにより,所定の箇所で局所的に塩化物イオンを発生させることができた。この"液中イオン銃"を鉄不働態皮膜に適用した結果,局部的に皮膜を破壊することができた。破壊に必要な臨界塩化物イオン量は皮膜の形成条件および皮膜にかかる電場,溶液pHなどに依存することが明らかとなった。 4。従来のSECM測定では,溶液中にフェロシアン化物イオンのレドックス系をメディエータとして含む必要があった。他方,本研究では,チタンのアノード酸化時に発生する酸素をプローブ電極で検出する手法によりSECM像を得ることに成功した。従来法との比較および光学顕微鏡写真との対応により,厚く成長した酸化物皮膜上で酸素発生が低下すること,および酸素発生の不均一性は下地結晶粒に依存することがわかった。
|