研究課題/領域番号 |
10555306
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 展開研究 |
研究分野 |
無機工業化学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岸尾 光二 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (50143392)
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研究分担者 |
佐藤 謙一 住友電工, 基盤技術研究所, 部長
越智 健二 東京大学, 工学部・附属総合試験所, 助手 (00301127)
下山 淳一 東京大学, 工学部・附属総合試験所, 助教授 (20251366)
兼子 哲幸 住友電工, 基盤技術研究所, 主任研究員
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研究期間 (年度) |
1998 – 1999
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研究課題ステータス |
完了 (1999年度)
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配分額 *注記 |
13,200千円 (直接経費: 13,200千円)
1999年度: 4,400千円 (直接経費: 4,400千円)
1998年度: 8,800千円 (直接経費: 8,800千円)
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キーワード | 超伝導材料 / 高温超伝導体 / 酸化物 / 臨界電流密度 / 液体窒素 / 線材 / テープ / プロセス制御 |
研究概要 |
臨界温度が高いことでも知られている酸化物高温超電導体は、その発見後10余年が経過したが、高温において高臨界電流密度(無損失電流密度)を持つ実用材料の開発は著しく遅れている。そこで本研究では、温度50K以上・1Tの高磁場下で、実用レベルである2万A/cm2以上の臨界電流密度を有する高温超伝導長尺線材の開発を目指した基礎研究を行った。具体的には、研究代表者らが先に見いだした、水銀(Hg)系、ビスマス(Bi)系酸化物超伝導体の安定化、および臨界電流特性の改善をはかり、液体窒素温度における各種実用用途に供する線材の作製手法を確立することを目的とした。 Hg系超電導体は化学的に不安定で、従来その作製が困難であるとされていたが、レニウム(Re)やクロム(Cr)などの遷移金属の添加により、相が安定化されると同時に臨界電流密度の向上も達成できることを見いだした。溶融凝固法の適用によりRe置換Hg系単結晶を育成することにも成功した。また、様々な厚膜テープの基体材料を検討した結果、Ni/NiO/Hg(Re)1223の3層構造が最適であることを見いだした。実際に作製した短尺テープの臨界温度はゼロ磁場下では119Kでゼロ抵抗、77Kにおける不可逆磁場はテープ面に垂直で5T、平行の時は7T以上と、現在までに報告されている高温超伝導テープ材の中では最高の値であることが確認できた。しかしながら本テープ材においても内部組織は十分c軸配向しておらず、今後の作製プロセスの改良を通じて、さらに高性能な材料が得られると期待できる。 いっぽう、高温超伝導材料として現在唯一実用化されているBi系超伝導体は、磁場下での臨界電流密度の向上が課題であるとされていたが、鉛(Pb)を大量にドープすることによりこのことが達成できることを発見した。まず、基礎データを得るために、一連のBi(Pb)2212単結晶を系統的に作製するとともに磁場下での電気抵抗率異方性や、ホール係数、光学反射率測定を通じて、本系ではPbドーピングにより系の電気的異方性が著しく減少し、ピニング特性の改善に寄与していることが確認できた。また、重イオン照射後の磁化特性の評価から、ピニングセンターの材料学的手法による導入もさらに有効であることが示された。添加Pb量、酸素量を調節したBi2212相超伝導体について特性向上の原因を明らかにし、これのテープ材料作製に着手した。実際のテープ材作製にあたっては、Bi(Pb)2212/Ag複合テープ材のドクターブレード法によるプロセスを検討した。溶融凝固法、アモルファス相から結晶相を析出させる方法などを検討してきたが、今だ十分な性能が得られていないものの、引き続き検討を加えていく価値のある有望な材料であることが明らかになった。
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