研究概要 |
近年,金属からの大気圧下での光電子放出を利用するUV/光電子空気清浄法が,半導体製造プロセスなどの次世代超クリーン化技術として注目されている.光電子放出電極として酸化膜が生成しにくいAu蒸着膜が有望であるが,連続使用により起こる原因不明の劣化の克服が実用化の鍵となっている.そこで,光電子放出材の性能向上の学理的指針を得るために研究を行った.まず,大気圧下においてAu蒸着膜に紫外光(波長254nm)照射下での光電子放出に与える有機分子の効果とその機構を調べた.Air気流中で観測された光電子電流(約100pAcm^<-2>)は,シクロヘキセン,1-ヘキセンでは応答が遅いが0.5 Torr の導入で30-40%の大きな電流増大が観測された.エタノール,水では20%程度の速く可逆的な増大,アセトンでは遅く大きな不可逆的阻害効果が見られた.In-situ仕事関数測定,表面のXPS測定,AirとN_2中の挙動の差異などから,シクロヘキセンから含有酸素化合物が生成し Au 表面に付着するため仕事関数が低下し,光電子放出が大きく促進されることがわかった.有機分子の効果としては,次の3つの機構があることがわかった.すなわち,(1)導入分子と酸素が含酸素吸着種を生成し仕事関数が低下(オレフィン)もしくは(2)上昇(アセトン)する場合.(3)導入極性分子の吸着による仕事関数低下と電荷運搬への気相分子の寄与(C_2H_5OH)の複合効果で光電子電流が増大する場合である.一方,長時間光電子放出させた場合,15nm程度であった Au の結晶子径が25nm 程度まで増大することがわかった.Au(111)配向した薄膜を用いると,(111)方向に Au の突起が成長することが源弛緩力顕微鏡により見いだされた.この Au表面の形状変化が,特性劣化と関連している可能性が示唆された.
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