研究概要 |
本研究では電気探査とMT法とを併用して地下浅部・深部の比抵抗分布を明らかにし,それから3次元的な温度分布構造を推定するための手法について検討した。この目的のために九州中部の阿蘇山を研究対象に選んだ。本研究の成果は以下のようにまとめられる。 1.ラドンの移動の数値シミュレーションとラドン原子数算定理論により,ラドン濃度の空間的分布から,幅・傾斜方位・傾斜角度に関する断層の形状を推定することが可能になった。また,熱水の通路となる断層上のラドン濃度は,火山性地震などに起因して大きな時間的変動を示すことが明らかとなった。 2.衛星画像と数値地形モデルとの組み合わせにより,熱水流動に影響を及ぼす断裂系の分布形態(走向・傾斜,分布密度)が推定できるようになった。 3.一般に坑井データは分布密度が低く,深度も限られており,直接データを補間しても温度分布の特徴が得られない。これを改善するためにニューラルネットワークと地球統計学とを組み合わせたところ,地表面から標高2kmの深度までの温度分布が3次元的に推定できるようになった。この分布モデルから断層の存在が温度分布に及ぼす影響や熱水の流動形態が把握できる。 4.活断層のように最近動いた履歴のある断層であれば地表面近くで比抵抗が低下する。断層の深部での比抵抗は一様でなく,特に破砕度が大きいと推察される部分の比抵抗は低い。阿蘇山火口西側の断層の推定分布域では比抵抗の異方性が顕著で,TEモードとTMモードとでは分布傾向が大きく異なる。 5.阿蘇山火口西側においてMT法によって推定された比抵抗と数値シミュレーションに基づく推定温度との関係を検討し,概ね温度が高いほど比抵抗が高くなるという傾向を明らかにした。また,同じ温度でも熱水の上昇域で比抵抗が低下する現象も見出された。
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