研究概要 |
高生産性を維持すると共に環境保全型農業を行う農地基盤の整備,並びに農村域の竹林を整備する基礎として,農地土壌の改良資材としての竹炭の基礎的性質を検討した.主な結果は以下の通りである.1)小型電気炉を試作し,400-1,000℃の非常に均質な竹炭を作成できた.2)SEMにより,維管束は竹の内側より外側で密度が大きく,維管束周辺は細胞が小さいこと,細胞壁はほぼ円形で,内側には直径0.1-0.5μm程の細孔があり,細胞壁外側,細胞壁,及び維管束境界面には細孔はないことが分かった.これらから,大きさが多様な微生物の棲息場所を提供できることが示唆された.3)竹炭は炭化温度が高くなるにつれ,木炭同様,炭のグラファイト化による導電性が増加し,精錬度が導電性で表せる.精錬度が増すと発熱ピークが1つと,燃焼に対して均質な構造を持つことが示唆された.4)竹炭物性と精錬度の関係は,炭化温度400-700℃で無定形炭素が結晶化し,グラファイトが連結され始める.体積は急激に収縮し,真密度が増加する.比表面積,イオン交換容量及びグラファイト構造が発達して灰分の水溶性が高まり,pH,イオン溶脱量も急激に増加する.800-1,000℃では,グラファイト構造が更に発達し,イオン交換容量,イオン溶脱量が徐々に増加するが,比表面積は小さくなる.炭化温度が700-800℃の時,比表面積,イオン交換容量,イオン溶脱量が最も大きい.また,竹炭からのカリウム溶脱量が多い.5)従って,竹炭には,土壌改改良資材として肥料分吸着,酸性土壌中和,肥料効果が期待できる.6)土壌微生物の活性に対する竹炭添加の影響は,25℃では顕著には見出せなかった.以上より,竹炭,特に700-800℃で作成したものは,系外への環境負荷を軽減でき,カリウム肥料としても期待できる.その結果,竹の利用範囲が拡がり,竹林整備,ひいては農村環境や景観・アメニティー改善,地域資源整備へ繋がり,農村域の循環機能を生かした整備が期待できる.
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