研究課題/領域番号 |
10557008
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 展開研究 |
研究分野 |
環境生理学(含体力医学・栄養生理学)
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
片渕 俊彦 九州大学, 大学院・医学研究院, 講師 (80177401)
|
研究分担者 |
八坂 敏一 九州大学, 大学院・医学研究院, 学長・特別研究員
武 幸子 九州大学, 大学院・医学研究院, 助手 (80253425)
安部 務恵 九州大学, 医学部, 助手 (60264040)
廣田 誠一 大阪大学, 医学部, 助手 (50218856)
|
研究期間 (年度) |
1998 – 2000
|
研究課題ステータス |
完了 (2000年度)
|
配分額 *注記 |
11,800千円 (直接経費: 11,800千円)
2000年度: 2,600千円 (直接経費: 2,600千円)
1999年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
1998年度: 6,700千円 (直接経費: 6,700千円)
|
キーワード | c-kit / Stem Cell Factor / 空間認知学習 / ミュータントラット / 苔状線維-CA3回路 / テタナス刺激 / 長期増強 / リアルタイムRT-PCR / 肥満細胞増殖因子 / c-kit mRNA / リアルタイムPCR / テタヌス刺激 / 海馬スライス / 隔離ストレス / c-kitミュータントラット / シナプス可塑性 / Paired-pulse facilitation / アラキドン酸 / 中和抗体 / CA3領域 |
研究概要 |
従来より免疫系における情報伝達物質と考えられていたサイトカインや、細胞増殖因子、および細胞接着因子などが脳内にも存在し、神経活動に影響を与えることで、種々の環境および社会的ストレス応答に重要な役割を果たしていることが明らかになってきた。c-kit受容体は、血球系幹細胞、特に肥満細胞や、生殖細胞およびメラノサイトに発現し、リガンドであるStem Cell Factor(SCF)が作用することで、これらの細胞の分化や増殖に関与している。ところが、成熟マウスやラットにおいて、c-kitおよびSCFは、学習・記憶に関与する海馬にも強く発現している。そこで、学習・記憶行動における海馬c-kit/SCFの役割を検討したところ、以下のことが明らかになった。 (1)c-kit受容体の細胞内ドメインの4個のアミノ酸が欠損し、チロシンキナーゼ活性が低下しているミュータント(Ws/Ws)ラットでは、モリス水迷路による空間認知学習が障害されていた。 (2)c-kitミュータントラットの海馬スライスにおけるSchaffer側枝/交連線維-CA1(S/C-CA1)経路、および苔状線維-CA3(MF-CA3)経路でのテタヌス刺激による長期増強現象(LTP)、および2発刺激によるpaired-pulse facilitation(PPF)は、ミュータントラットにおいて、MF-CA3でのみPPFおよびLTPが低下していた。 (3)マウスのMF-CA3経路におけるPPFおよびLTPに対するリコンビナントSCF投与の影響を検討したところ、SCFは、シナプス後膜のc-kit受容体に作用した後、PI3'キナーゼ、およびフォスフォリパーゼA2の賦活化を引き起こし、産生されたアラキドン酸を逆行性神経伝達物質として、前シナプス性増強現象であるPPFおよび、LTPを修飾することが明らかになった。 (4)マウス海馬スライスにおいて、MF-CA3回路のテタヌス刺激によって、SCFおよびc-kit mRNAの発現が低下することを、リアルタイムRT-PCR法でmRNAを定量した結果、明らかになった。 (5)社会的ストレスとしての隔離ストレスによって、脳内SCFおよびc-kitのmRNAは、減少した。 以上から、環境ストレス時には、SCF/c-kitシグナル伝達が修飾され、学習記憶行動が影響を受けることが考えられた。SCFが肥満細胞分化増殖因子であることから、脳内肥満細胞の機能も変化することが示唆される。
|