研究課題/領域番号 |
10557057
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 展開研究 |
研究分野 |
呼吸器内科学
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
安岡 劭 徳島大学, 医療技術短期大学部, 教授 (30035414)
|
研究分担者 |
小山 一 徳島大学, 医学部, 助教授 (80109074)
佐野 壽昭 徳島大学, 医学部, 教授 (80154128)
益田 賢一 帝人(株), 創薬第2研究所, 主任研究員
中村 陽一 徳島大学, 医学部・附属病院, 講師 (00237447)
|
研究期間 (年度) |
1998 – 2000
|
研究課題ステータス |
完了 (2000年度)
|
配分額 *注記 |
6,600千円 (直接経費: 6,600千円)
2000年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
1999年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
1998年度: 3,800千円 (直接経費: 3,800千円)
|
キーワード | 組換え標品の合成 / 遺伝子多型 / 気道上皮細胞 / インターロイキンー8 / 線溶系の活性化 / ヒト気道トリプシン様プロテアーゼ / 線維芽細胞 / TGF-β1 / TGF-β / インターロイキン-8 / 組換えの標品の合成 / 気道 / 遺伝子構造 / 組換え酵素 / モノクロナール抗体 / 免疫組織化学 / プロウロキナーゼ |
研究概要 |
我々がヒト気道で新しく見出したヒト気道トリプシプシン様プロテアーゼ(HAT)の気道におけ生理的意義と気道炎症における病態的意義を解明するために、以下の研究を行った。 1.HATの局在部位:クローニングに成功したHAT遺伝子をvaculovirusをベクターとして昆虫細胞に導入し、組換えHAT(r-HAT)を生合成した。このrHATに対する抗体を4種類作成した。その内のマウスモノクロナル抗体を用い、肺手術時に得られた気管支組織を対象に超感度免疫組織染色法で、HATの局在部位を検索した。この方法で、HAT陽性反応は線毛上皮細胞に限局してみられた。さらに気管支鏡で採取したヒト気管支上皮細胞にもHAT陽性反応がみられた。HATの遺伝子構造に基づき、そのprobeを作成し、種々の細胞を対象にHATのmessenger RNAの存在を検索すると、培養ヒト気管支上皮細胞で陽性であった。以上の成績から、気道系において、HATは腺毛上皮細胞で合成され、この領域で生理的な役割を発揮していると考えられた。 2.HATの内因性タンパク分解能:HATにはプロウロキナーゼを限定分解してウロキナーゼに活性化する作用と、fibrinogenの特にα鎖を分解してトロンビンによるフィブリンクロット形成を抑制する作用、があることが明らかになった。しかし、HATにはあプラスミノーゲンを直接活性化する作用はなかった。 3.正常ヒト気道上皮細胞(NHBEC)に対するHATの影響:喀痰中の濃度のHATはNHBECによるInterleukin-8やGM-CSFなどのサイトカインの合成・放出を促進することがELISAによるIL-8の測定、Northan blotによるIL-8のmRNAの検出、により確認された。この作用はプロテアーゼ活性化リセプター2(PAR2)を介するものであることが示唆された。 4.線維芽細胞に対するHATの影響:喀痰中の濃度のHATは、ヒトの肺および気管支線維芽細胞の増殖促進作用と、これら細胞によるTGF-産生促進作用を、もつことが明らかになった。 5.HAT遺伝子多型の分析:HATの遺伝子多型をヒト末梢血多核白血球を対象に分析した。HATの遺伝子には3つのイントロンがあり、これをそれぞれA、B、Cと命名した。制限酵素処理によりイントロンCに遺伝子多型が存在することが明らかになった。正常者を対照に、種々の慢性気道疾患と肺気腫患者のHATの遺伝子多型を分析した。そのびまん性汎細気管支炎と肺気腫で、遺伝子多型の分布の以上がみられた。 6.まとめ:HATは主に気道上皮細胞で合成され、気道粘膜側で広義の気道の生体防御機能に関与していると推定される。たとえば、HATがウロキナーゼによるプラスミノーゲンの活性化、プラスミンによるコラゲナーゼなどの金属酵素の活性化、らの一連の過程を介して気道粘膜側の組織の分解、再生、修復に関与している可能性が高いと推定される。しかし、慢性炎症性疾患においては、HATの過剰産生が起こり、気道上皮細胞による炎症性サイトカインの合成促進、線維芽細胞の増殖やTFG-β1産生の促進、などの作用で、病態を増幅したり、リモデリングを促進している可能性が推定される。
|