研究分担者 |
堀井 明 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (40249983)
砂村 眞琴 (砂村 真琴) 東北大学, 医学部附属病院, 講師 (10201584)
渋谷 和彦 東北大学, 医学部附属病院, 助手 (70260429)
武田 和憲 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (20171639)
古川 徹 東北大学, 医学部, 助手 (30282122)
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研究概要 |
膵がんの個性を探り、それに基づいて膵がん征圧のための効果的診療戦略を立てるために1.全常染色体に渡るヘテロ接合性の消失(LOH)の解析と臨床病理学的因子との比較検討、2.マイクロサテライト不安定性(MSI)と候補標的遺伝子TGFβRII, IGFIIR, BAX, PTENの解析、3. 6q、12q上の高頻度欠失領域におけるがん抑制遺伝子の検索、4.染色体異常を指標とした新しい膵がん診断法としての膵液FISH法の開発、5.TP53関連遺伝子であるp73,p33/ING1遺伝子の解析を行った。結果1. 12q,17p,18qにおいてLOHを認めた群では予後が有意に不良であった。2.高頻度のMSIが膵がん症例の15%に認められたが検索した候補標的遺伝子には何れにも異常は認められなかった。3. 6q21,12q21,12q22-q23.1の各高頻度欠失領域について細菌人工染色体を用いた物理的地図の作成と塩基配列の決定、転写候補領域の同定を行った。候補遺伝子としてDUSP6,TDGを単離し、何れも膵がんで発現が減弱しており、腫瘍抑制遺伝子としての可能性が示唆された。4.膵液中の細胞の染色体領域欠失はFISH法により検出可能で、診断の補助として有用であった。5.p73遺伝子異常の頻度は非常に少なく、腫瘍における主要な変化ではないことが示された。P33/ING1のスプライス変異遺伝子であるp24/ING1-ALT1,p47/ING1-ALT2を単離同定した。 以上の結果は,染色体領域欠失、新たながん抑制遺伝子の異常が膵がんの分子的個性を反映し、さらに症例の個別化を可能とすることを示しており、より精度の高い予後予測からより綿密かつ的確な治療を個々の患者について選択できるオーダーメイド医療の実現に寄与できる可能性を開くものと考えられた。
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