研究分担者 |
庄司 洋史 神奈川歯科大学, 歯学部, 助手 (90277913)
小林 裕 神奈川歯科大学, 歯学部, 講師 (50130919)
田村 謙二 神奈川歯科大学, 歯学部, 教授 (20163686)
李 昌一 神奈川歯科大学, 歯学部, 講師 (60220795)
河野 雅弘 日本電子株式会社分析機器技術本部, ESR開発グループ, グループ長
塗々木 和男 神奈川歯科大学, 歯学部, 講師 (90139577)
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研究概要 |
電子磁気共鳴(ESR)法は,ラジカル種を非侵襲,非破壊的に直接測定できる方法である。とくにin vivo ESR法は生体内に存在するラジカル種の非侵襲測定を可能とし,ラジカル動態のモニタリングに対し有効な手段である。現在磁場掃引速度の高速化及び画像処理技術の向上により2次元ESR imagingが可能となっているが,3次元ESR imagingではラジカルの空間的分布を明瞭にすることは困難である。我々の教室では三次元磁場勾配コイルを備えた3次元ESR-CT imaging装置を開発し,ラジカルスピンプローブを投与したマウス頭部およびラット摘出脳の2次元投影ESR測定および3次元ESR-CT imaging測定に成功した。またこの方法で得られたデータをもとにX,Y,Z3方向からの断層画像,そして立体画像構築を試みた。本実験で我々は,血液脳関門(Blood Brain Barrier; BBB)透過性の異なる2種類のニトロキシドラジカルスピンプローブ(carbamoy-PROXYL, MC-PROXYL)を用いた。ESR imaging測定は,我々の開発したESR imaging systemを用いて行った。本systemは,生体計測用L-band ESR分光計にイメージング用高速掃引コイル,3次元磁場勾配コイル,バイポール型定電流増幅器を備えており,磁場勾配制御,データ収集及び画像再構成演算はパーソナルコンピュータにて処理される。また、3次元データをもとにして立体視覚化処理も可能である。ESR imaging実験は,スピンプローブ投与ラット摘出脳のESR imaging測定を行った。MC-PROXYL投与ラット摘出脳からニトロキシドESRシグナルが検出され、輪郭のはっきりとした二次元画像が得られた。これに対し,carbamoyl-PROXYL投与ラット摘出脳からはESRシグナルはほとんんど検出されず,carbamoyl-PROXYLが脳へ移行していないことが確認された。また,総頚動脈からの片側投与実験では,MC-PROXYL投与側の脳半球からラジカル分布画像が得られ,ESR imaging測定によりスピンプローブ分布の位置情報を三次元画像として明確に峻別可能となった。摘出臓器でのimaging測定後,in vivo ESR測定を行った。マウス尾静脈よりcarbamoyl-PROXYL,MC-PROXYLを投与後、マウス頭部から3本線ESRシグナルが検出され,頭部領域にスピンプローブが到達していることが確認された。しかし磁場勾配を与えて測定した3次元ESRスライス画像は,頭部領域へのラジカル分布を示していたが,carbamoyl-PROXYLは脳に移行していないことが確認された。また,このデータをもとに立体視覚化処理を行った立体画像でもcarbamoyl-PROXYLは脳に移行していないことが確認された。しかし,得られる画像からin vivoスピンプローブ分析の詳細を判別することは現段階では難しいと思われる。これは、用いたスピンプローブの線幅がESR imagingには広いこと,また現在使用しているソフトの画像処理能力が不十分であることなどが挙げられる。従って,より詳細なラジカル分布の位置情報をえるために,スピンプローブの開発と本システムのさらなる改良・開発を進めていきたい。
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