研究概要 |
骨組織の恒常性は骨の吸収と新生のバランスにより保たれ,その破綻は様々な病態を引き起こす。歯周病は,歯周ポケットにおける慢性細菌感染が原因と考えられているが,その際に産生されるプロスタグランディンE2(PGE2)やインターロイキン1(IL-1)などの炎症反応メディエイターが,歯槽骨における破骨細胞形成と骨吸収を促し,歯牙喪失を引き起こす。我々は,TGFβファミリーに属するアクチビンが,抗IL-1活性を有することに着目し,アクチビンAの,破骨細胞形成の抑制効果の有無を検討してきた。本研究により,我々は,TGFβファミリーメンバーの骨芽細胞と破骨細胞におよぼす効果を検討し以下のような研究結果を得た。 骨芽細胞と骨髄細胞の共存培養において,1)TGFβ1,アクチビンとBMP-2は,いづれも活性型ビタミンD3[1a,25(OH)2D3]とIL-1αによる破骨細胞形成をそれぞれ促進すること(BMP-2>TGFβ1,アクチビン),2)BMP-2による破骨細胞形成促進効果は,骨芽細胞による破骨細胞分化因子(ODF)mRNAの発現誘導を介する可能性があること,また,骨髄細胞は,マクロファージ-コロニー刺激因子(M-CSF)とODFの2つの蛋白因子の存在下の単独培養で破骨細胞に分化するが,3)骨髄細胞単独培養系において,アクチビンAは破骨細胞形成を著しく増強するを明らかにした。3)については,英国の研究グループからも同様の報告があり(Biochem. Biophys.Res.Comm. 268:2-7, 2000),破骨細胞形成においてアクチビンAが,極めて重要な役割を果たしていることが示唆された。また,この事実は,アクチビン阻害因子が,骨粗鬆症や歯周病の治療薬となる可能性を示唆している。現在、アクチビンAによる破骨細胞形成促進のメカニズムを解析すると共にアクチビン阻害因子による破骨細胞形成阻害について検討中である。
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