研究概要 |
G蛋白質共役型受容体(GPCR)刺激によってG蛋白質は活性化され,αとβγサブユニット(Gβγ)とに解離するが、αサブユニットに加えて、Gβγもいくつかのエフェクター分子の活性を直接制御することが見出されている。本研究では、Gβγが種々の効果器の活性を調節する分子機構について解析するとともに,110-kDaβ触媒(p110β)/85-kDa調節(p85)サブユニットからなる2量体型イノシトールリン脂質3-キナーゼ(PI3K)について解析し,以下の知見を得た。1.Gβγによる2型アデニル酸シクラーゼの活性化において、Gβはその第1WDモチーフを中心として相互作用することが,一方,酵母のtwo-hybrid系による解析から、Raf-1キナーゼはGβの第3及び第6WDモチーフと相互作用する可能性を見出された。2.p110β/p85-PI3Kは,Gβγとリン酸化チロシンを含むペプチドによって相乗的に活性化された。3.構成的に活性化型のp110β-PI3Kと相互作用する分子を酵母のtwo-hybrid系を用いて検索し,低分子量GTPaseファミリーのRab5を同定した。4.Ser/ThrキナーゼのAkt(PKB)は,PI3Kの産物であるPIP3により活性化されるが,インスリン刺激に応答するAktの活性化は,活性化型Rab5の遺伝子導入で増強され,不活性化型Rab5により抑制された。5.活性化型Rab5の相互作用分子をtwo-hybrid系を用いて検索し,SH2ドメインをもつ新規分子群を同定した。エフェクターとしての役割が期待されるこの新規Rab5結合蛋白質群は,初期エンドソームに局在化することが示された。6.リンパ球細胞において,Fcγ受容体でチロシンリン酸化されるPI3Kのアダプター分子として,Gab2を同定した。このアダプターはGPCRである化学遊走因子受容体の刺激によりそのセリン/スレオニン残基がリン酸化されるというユニークな挙動を示した。
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