研究概要 |
本研究では,盲児が,空間の理解と,空間内での移動・操作の,能力を習得するのを補助する,計算機支援システム(CAI)を研究・開発し,システムの有効性を盲学校でのフィールドテストで評価した.システムは2つのサブシステムからなる. 一つは,身体周辺での物体操作や,室内での物体の位置関係の習得を支援するものである.これは,空間的な広がり(左右,前後,上下),物体の大小関係,物体の形状,物体の空間的な配置を,触覚と運動,および盲児の目を代行するカメラを備えたシステムからの聴覚的フィードバックにより,盲児が一人で学習できるようにする.すなわち,システムが提示した,図形の選択や配置などの課題に対して,盲児が自身の手と触覚で行った結果を,システムがカメラを通して評価し,合成音声により結果と指示を与えるものである. もう一つは,盲児が空間内で思い通りの移動ができるような能力の獲得を支援するものである.直線/左右回転/スクウェアなどの歩行を,課題として与えられた盲児の行動を計測する.そして,行動を計算機で評価し,聴覚により言語的に,あるいは触覚によりパターン的に,盲児にフィードバックする.この訓練を繰り返すことで,盲児は移動を体で覚え,体性感覚フィードバックにより思い通りの移動ができるようになる. このように本研究のシステムは,盲児が,空間の理解と,空間内での移動・操作の,能力を習得するのを支援するもので,視覚障害者の生活支援機器の一つである.
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