研究概要 |
1998年9月22日午後1時過ぎ,和歌山県田辺市付近に上陸した台風7号は,奈良盆地西部葛城・生駒山系を通過し,近畿地方を縦断しなから夜半に日本海へ抜けた.上陸時の中心気圧は約970hPaであり,従来の巨大台風に比べてそれほど大きな規模とは言い難いものの,奈良盆地および周辺のいくつかの気象官署で最大瞬間風速50m/sを超える強風が観測され,建物,鉄道,樹木や神社仏閣などの歴史的建造物に多大の被害を及ぼした. 本研究では,これらの経緯から被害状況の広域的な調査を実施すると共に,被害程度からの風速の推算,当時の気象状況の把握,建物被害率と風速との関連,地形による強風への影響,等について分担して調査研究を実施した.それらの概要は以下の通りである. (1) 被害状況の調査 奈良盆地および大阪府南東部葛城・金剛山系,和歌山県紀の川流域,三重県伊賀盆地の被害分布と被害状況を上空より撮影した.とくに樹木の倒壊が河道に沿った風上側の山間斜面で顕著であり,地上付近の強風は地形の影響を強く受けたものと判断された. 奈良県下の公共機関(県庁出先機関,消防署,学校,など)を対象にアンケート調査を実施し,当日の被害の有無,被害発生時刻と風向などについて広域的なデータを得た. (2) 風速の推算 道路標識,トラックの横転から現地の風速を推算し,約50m/s前後の値を得た.この結果は近隣の気象官署の観測値にほぼ匹敵するものであった. (3) 当時の気象状況 奈良,和歌山,大阪,兵庫,京都,滋賀,福井,愛知,三重,岐阜,各府県の消防署 レーダー,アメダス気象観測データ の収集を行い,台風通過前後の気象状況の変化の解析を行った.
|