研究概要 |
ロックやデカルトの観念説は、自然学による新たな物そのものの措定を基盤としていた。したがって、「観念」や「表象」を継承しながらその自然学的背景を切り捨てようとしたバークリやカントは、観念(ないし表象)の自然学的論理空間に依拠しつつ、同時にそれを解体しようとしたことになる。ロック以後のこの観念説の論理の解体過程を念頭に置きながら、西洋近代の「認識論的転回」がどのような論理の下に推進されていたと見られるかを明らかにすることが、本研究の主要な目的である。 まず、すでに公表されているロック哲学の読み直し(Yasuhiko Tomida,Idea and Thing,in Analecta Husserliana,46[1995],pp.3-143)に関して、海外の研究者(特にJohn W.Yolton)との議論を通じ、その方向性の再確認を行った。次に、ロックに見られる自然学的論理空間が、デカルトの観念説にも認められるかどうかを検討した。その結果、デカルトに関しては、自然学から形而上学へという方向性と、従来自明のこととされてきた、形而上学から自然学へという方向性との、動的・重層的連関が明らかになった。そして、以上の作業に基づき、バークリにおいて、「観念」がどのようにその性格を変更していったかを検討した。 次に、もう一度ロックに立ち帰り、彼の観念説が、どのような仕方で自然主義的発生論的過程の痕跡を残していたかを、明らかにするよう試みた。そして最後に、ロックの自然主義の本質を明らかにすべく、リチャード・ローティのロック解釈に対する批判を試みた。 本研究は、新たな科学研究費補助金を得て、「ロックとバークリにおける観念の論理空間の比較研究」として続行される。この研究によって、近代認識論の哲学的意義に大きな変化がもたらされることが予想される。
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