研究概要 |
初期仏教聖典の中でも、最古層に属し最も重要な聖典である『スッタニパータ』、『ダンマパダ』、『テーラガータ』、それに『テーリーガーター』を包含した正順と逆順の「誌脚索引」(Pada Index)を作成した。この誌脚索引は、研究者の利便性を考慮して、現在のPTS版Pali-English Dictionaryと同一の語順に配列した。例えば、-m__・+(k,kh,g,gh)と-n^^・+(k,kh,g,gh)を含む詩脚は同じ一魂として収集した。 次に、この詩脚索引とジャイナ数の最も古い5聖典、すなわち『アーヤーランガ・スッタ』(Ayarangasutta)、『スーヤガダンガ』(Suyagadamga)、『ウッタラッジャーヤー』(Uttarajjhaya)、『ダサヴェーヤーリヤ』(Dasaveyaliya)、『イシバーシヤーイム』(Isibhasiyaim)包含した正順・逆順「詩脚索引」とを、注意深く比較・対照し、両宗教聖典にみられる並行詩節(parallel Verse)と並行詩脚(Parallel Pada)、それに類似した詩節や詩脚をも網羅的にピックアップした。さらに『マハーバーラタ』等のバラモン教関連文献の並行誌脚をも収集した。 これらの並行詩脚は種々様々な項目に分類することができたが、それらは思想や実践道、戒律等の大きな項目に含まれるものであった。そして、これらは仏教・ジャイナ両宗教が沙門という共通の母胎から興起したことを証明していると同時に、仏教やジャイナ教が独自の教団として活動を始める以前、つまりバラモンに対抗して遊行・遍歴する沙門の集団として共同の生活を送っていた頃に形成されたものであり、彼らが独自の宗派を形成した最初期の頃においても採用されたことを想定することができる。
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