当初の研究計画に沿って、以下年度別に研究成果の概要を記す。 (平成10年度) マキァヴェッリの政治関連著作の三作品、"Dell'arte della guerra"、"Il principe"、"Discorsi"の日本語翻訳として、それぞれ2種類、4(5)種類、2(3)種類をデータベースの対象として選択(括弧内の数字が当初予定)、すなわち、浜田訳『戦術論』(原書房、1970)と服部訳『戦争の技術』(筑摩書房、1998)、『君主論』は黒田訳(岩波文庫、1935)、佐々木訳(講談社学術文庫、1994)、池田訳(筑摩書房、1998)、河島訳(岩波文庫、1998)、そして大岩訳(岩波文庫、1949-50)と永井訳(筑摩書房、1999)である。原典は基本的に電子ブック(LIZ2.0)に準拠。実質的作業は"Dell'arte della guerra"デジタル化に費やされた。 (平成11年度) 引き続き"Il principe"、"Discorsi"の訳文をOCRにて読み取り認識の上デジタル化、しかし一部にとどまる。"Dell'arte della guerra"はテクスト、翻訳2種類を原文の段落ではなく、一文(センテンス)ごとに対応付けて区切り通し番号を付す。 (平成12年度) 前年度の作業を継続するとともに、とくに"Dell'arte della guerra"の第一巻にしぼって<アルテarte/arti>の意義を考察、マキアヴェッリの思想全体におけるこの用語の重要性を改めて発見するに至る。端的に言って、<アルテarte/arti>は単なる技術ないし技法を意味するものではない。むしろそこにはマキアヴェッリの職業倫理が色濃く滲み出ていると解釈し、少なくとも本書は『戦術論』でもなく『戦争の技術』でもなく、『戦争職業論』として訳されるべきことを提案するまでに至った。われわれからこの思想に対峙するには<ヴィルトゥvirtu'>、あるいは<フォルトゥナfortuna>からよりも、むしろこの<アルテarte/arti>の位相を析出せねばならぬであろう。 なお、テクストと日本語訳2種類が文章番号に応じて同時に比較対照できるデータベースの試作品をCD-ROMに焼きつけて作成した。"Dell'arte della guerra"の序と第一巻に限る内容である。
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