ヨーロッパ中世の修道院における神学・哲学の営みを、特に12世紀のサン・ヴィクトール学派の哲学者たちを中心に研究し、成果を発表することがこの研究の目的であったが、平成10年度中には、まだ所期の成果をあげることはできなかった。サン・ヴィクトールのフーゴーおよびリカルドウスの思想を考察することが研究の中心であり、平成10年度中には彼らの原典を読解し、ノートをとる作業に費やされた。フーゴーについては、彼の主著とされる『サクラメント論』を、主に英訳によりつつ全体構造を理解しようと試みた。残念ながら、この書の原書・ラテン語の批判校訂本を国内では見つけることができず、その理由も手伝って、平成11年度に国外に留学して研究することを希望するようになった。リカルドウスについては、これも彼の代表作である『三位一体論』を読み、ノートにする作業を数年前から続行している。 成果の発表については、平成10年3月28日に行われたトマス研究会で、「サン・ヴィクトールのフーゴーにおける『教養』の問題」と題して、研究発表をしたが、この論文を平成11年度中に共著の一論文として発表する目処がついたところである。
|