研究課題/領域番号 |
10610057
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
美術史
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研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
川村 知行 上越教育大学, 学校教育学部, 助教授 (10153016)
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研究期間 (年度) |
1998 – 2000
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研究課題ステータス |
完了 (2000年度)
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配分額 *注記 |
3,300千円 (直接経費: 3,300千円)
2000年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
1999年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
1998年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | 美術史 / 醍醐寺 / 白描図像 / 白描画 / 図像抄 / 恵什 / 密教図像 / 仏画 / 自描図像 / 図像 |
研究概要 |
本研究は仏教図像集の基礎資料である『図像抄』の成立を明らかにすることを目的とした。『図像抄』は、十巻にわたって諸尊の像容を約140図、収録した最初の図像集であり、最重要資料であるにもかかわらず、その編纂者について、恵什説と永厳説があり、恵什については生没年も不詳なほど不明な点が多かった。そこで、平成10年度以来、全図像の典拠を検討し、重文指定の醍醐寺本を定本にして、異本との交合を行い、写本系統を整理することによって、白描図像全体の伝来の中で位置づけをし直して来た。本研究の実作業は図像抄を収集することを第一目的としたため、醍醐寺・仁和寺など、図像抄の現存写本を可能な限り、調査出張に重点を置き、醍醐寺を中心に調査を実施した。その調査成果の副産物として、醍醐寺の仏画について「醍醐寺所蔵仏教絵画総合目録II-如来・菩薩-」をまとめることができたが、本研究の最大の成果は、図像抄には本文の補注として、裏書きがあり、諸本によって、その裏書き補注に二系統あることを発見したことである。活字として公刊されている図像抄とは写本系統を異にするもの、また中には大正新修大蔵経の図像部には掲載されていない図像も見出すことができたので、校合の結果の異同一覧表をまとめることができた。また、表だけではなく、裏書にも諸本の間には、異同があるが判明したので、これも一覧表を作成した。さらに、仁和寺本「三僧記類聚」の調査の結果、恵什の出生と履歴についての新資料を発見することができ、謎の多かった恵什のは事績年表をほぼ完成することができた。 以上の作業から、醍醐寺所蔵の白描図像の系譜を聖教の写本系統の転写関係を検討した結果、恵什の第一原本は仁和寺にあったが、裏書きの少ない鳥羽院への上覧本が永厳によって献上された。また、裏書きの多い流布本は恵什によって、仁和寺を出て、密教図像家に活用された。建久六年という、もっとも古い醍醐寺本は、諸寺に多くある流布本ではなく、むしろ上覧本の原形にもっとも近いものであると結論が得られた。
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