研究概要 |
大卒就職者の職場適応に関するデータを収集するために,大学卒業後5年目の男女28人に対して,質問紙と面接による調査を行った。質問紙は郵送法により,卒業後の進路と職場の状況,職務満足,大学生活と大学時代および卒業後1年目の職業探索行動または職場適応に関する回想,ライフ・プロジェクトの測定を行ない,時間的展望と自我同一性地位の測定,VPI職業興味検査も実施した。面接調査は,予備調査をふまえて,職場適応の実際の行動,その動機と見通しについて明確にするための質問から構成された。面接記録は筆記されると同時に,テープレコーダーで録音され,文章化された。 その結果,第1に,大卒者の初期キャリア形成の過程は,大学卒業時に希望していたキャリア目標を軸に,職業や職場との適合感や満足感を手がかりに,その後の結婚なのどの人生課題と取り組みつつ,ライフ・スタイルとライフ・プランを創造していく過程であると考えられた。第2に,時間的展望では,将来展望が長期化・具体化し,個人のライフ・トラジェクトリーが複数の選択肢として設定されること,第3に,未来や現在の視点から過去を意味づけていることが明らかにされた。初期キャリア形成の支援の内容として,第1に,大卒後のキャリアの多様性に対応すること,第2に,キャリア段階で支援の内容を変えること(教員であれば,大卒2年目では理想と現実のギャップの支援,5年目では自己客観化に伴うステップアップの支援),第3に,ライフイベントへの直面に対する見通しを形成することが求められる。大学生の就職指導に関しても,選職指導だけではなく,大学卒業までのキャリア目標の形成過程に関与したりして,人生設計の支援することが必要であると提案された。
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