研究概要 |
学校ストレスに関する問題は,学校環境におけるストレスの認知的評価がその後のストレス反応や動機づけの低下をまねくと考えられる。学校生活の中に存在する同様のストレッサーを経験していても,その出来事にたいする意味の捉え方が異なれば適応的感情を招く場合もあるし,反対に不適応的感情(ストレス感情)を生じる場合もあると考えられる。 したがって本研究においては不登校に陥っている生徒に特有の認知を重視したストレッサー尺度を作成し,「他の子には何でもない出来事でも不登校をおこす子どもにとってはしんどい」といった,教師の目からは見えないストレッサーの存在を明らかにすることを研究Iの目的とした。結果,「自信のなさ」「存在承認の欲求」「求群感情」「集団内での自己表現」「独立への欲求」「嫌群感情」「テスト不安」「強制への嫌悪」の8因子が見いだされた。いずれの因子についても"不登校予備軍"生徒と,"普通児"生徒の間で有意な差が見いだされ,これらが不登校生徒にとって特有のストレッサーとなっていることが示された。 次に研究IIにおいては,不登校生徒が陥りやすい,ネガテイブなコーピング方略尺度を構成し,中学生のコーピングの実態を調べた。結果「神経過敏を伴う自己批判」「否認・責任転嫁」「攻撃」「問題回避」「依存的ソーシャルサポート」「引きこもり」の6因子が見いだされた。"不登校予備軍"と"普通児"のコーピングの違いをみたところ,すべての因子について有意な差が見いだされた。特に"不登校予備軍"は攻撃・問題回避・神経過敏を伴う自己批判を多く用いることが明らかにされた。
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