研究概要 |
このテーマに関連した次の4つの研究を行った。 1,集団成員全員が同一の行動をするようになるプロセスに、集団サイズ(12人と24人)と、その行動をすでにしていた成員の初期割合(50%、67%、83%)がいかに影響するかについて検討した。被験者には表と裏の色が異なるB5サイズのカードが配布された。そしてなるべく早く全員が同じ側を掲げるように教示された。実験の結果(1)集団サイズは斉一性の達成時間に影響しなかった。(2)斉一性の方向への変化率にはその瞬間の成員の割合だけでなく、初期割合が影響していることが明らかになった。 2,緊急事態からの脱出行動を2つの社会心理学的理論(没個性化理論と社会的アイデンティティ理論)から説明することを試みた。そしてその妥当性について吟味した。前者は無意識や衝動の役割を強調し、後者は意識や理性を重視する。実験の結果、規範の形成や拡散には成員の意識的合理的な面が強く働いていることが明らかになった。 3,1996年6月13日ガルーダインドネシア航空機は福岡空港で離陸失敗事故を起こした。この研究では物理的要因(火災、煙、破壊)と人間的要因が集団成員の理性にいかに影響するかを検討した。その結果物理的脅威は理性をかえって高めることが明らかになった。家族の絆は破壊されずまたリーダーシップや助け合いは損壊の程度が高かった領域ほど顕著に見られた。 4.日本における社会的手抜きの集団内拡散の性差を吟味した。綱引きのような事態が実験室内に作られた。実験の結果、男性の方が女性よりも手抜きをすることが明らかになった。男性の場合は個人個人の力が測定されず集団全体の力のみが測定されるような事態では個人当たりの張力が低下した。これは日本人の達成動機に関する性差の現れであると解釈された。
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