研究概要 |
本研究の目的は(a)安全衛生行動とコントロール感との関連性を明らかにすることと(b)衛生関連行動に影響を及ぼす要因を明らかにすることであった。 第1の目的のために質問紙調査を行い、Zohar(1980)のSafety Climate Questionnaireに基づいて安全衛生行動を測定するための尺度を構成した。また、Levenson(1981)のInternal, PowerfulOthers, and Chance Scaleを邦訳し、コントロール感を測定するための尺度とした。その結果、内的コントロール型の個人は、外的コントロール型の個人に比べ安全衛生教育の重要性や効果性を認知していることが見出された。 第2の目的のために実験と質問紙調査を行った。その際、安全衛生行動のうち衛生行動に焦点を当てた。衛生行動の中でも、日々の健康維持とも関連するウォーキングを勧める効果的な方法を明らかにするために質問紙実験や調査を行った。まず、ウォーキングについて受け手(同答者)に思考させることの効果を明らかにするために、質問紙実験を行った。ウォーキングの効用について自由記述させる条件、ウォーキングの効用に関する項目をチェックさせる条件、ウォーキングの効用については思考させないコントロール条件を設定した。質問紙実験後、約4週間に行ったウォーキングの実施回数に関する条件間の有意差は認められなかった。しかし、チェック条件において、ウォーキング実施回数とウォーキングに対するポジティブな態度との有意な関連性が認められ、説得の内容について思考させることの有効性が示唆された。 続いて、Ajzen(1991)の計画行動理論に基づいて、ウォーキングの実施回数と関連する変数を明らかにするために質問紙調査を行った。その結果、ほぼAjzen(1991)の理論通りの結果が得られた。ウォーキングの実施同数と直接関連していたのは、ウォーキング実施の行動的意図であった。その行動的意図は、ウォーキングに対するポジティブな態度、重要他者からの期待と有意に関連していた。さらに、重要他者からの期待と関連していたのは、重要他者のもつ専門勢力と参照勢力であった。受け手に働きかける場合、受け手の重要他者の助けを借りることが1つの方策になることが示唆された。
|