研究概要 |
水稲作地帯における農家経営の困難という事態のなかで、その克服のために稲作農民が現時点でどのような営農の方向を検索しているかを、山形県鶴岡市,同酒田市と岡山県岡山市での事例調査を踏えて検討した。まず、鶴岡市,酒田市が位置する庄内地方では,従来,個別農家の個別的な農田機械装備にもとづく経営がおこなれれてきたが、近年では、過剰投資感が進行した。他方では、そこにライス・センターの稼動とあいまって,コンバインの共同所有をもさくした秋作業の共同化が志向される。鶴岡市平京田ではライス・センターの利用班が田植機共同の単位ともなり,春作業をも含めて全般に渡る共同化が、「施設主導型」として,おこなわれている。酒田市漆曽根四区の場合には、鶴岡市と同様に,ライス・センターが利用班構成をとってはいるが、加入率はまだ高くはない。つまり、これまでは、「施設主導型」として,稲作業の共同化が進むということはなかった。しかしながら,「高速道路関連事業」によって,コンバインを中心とした,農用機械の共同化と同時に、刈取作業の共同化が生じた。ライス・センターの定着とともに,利用班の形態をとった共同化が定着していくものと予測される。 他方、岡山市藤田では,山形県鶴岡市,同酒田市に比べて農用機械の共同化,共同作業は見られない。そのかわりに,生産組織の形態をとった受託組織が典型的に見られる。生産組織である「雄町会」は,10戸の農家で約170ヘクタールの受託をおこない、集落を越えて,旧村単位で農業経営に従事しているのである。山形県鶴岡市,同酒田市の場合には,個別農家の自立性と集落の実結性が高いが、岡山市の場合には、個別農家の自立性が弱く,しかも集落の実結性も低い。そこに集落を越えた生産組織の形成が見られ、かつは当の生産組織が大規模経営をおこなうわけである。この生産組織がどのように再編されるかもひとつの課題である。
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