研究概要 |
1998年から3年度にわたった当研究では,研究代表者が1986年に関わった調査以来単独で行ってきた継続調査によって明らかにしてきたことを,改めてサーベイ調査によって確認すると同時に,新たな動向を探索することを目的とした.その結果,以下の点が確認されると同時に,明らかになってきた. まず,調査対象地に80年代以降定着してきたお神輿を中心とした新しい祭礼については,やはりこの町に最初に定住した家族の二代目層が中心的な担い手になっていたことが確認された.と同時に,三代目にあたる20代から30代の地元出身者がこれを引き継いでいることが明らかになった.しかしながら彼らの多くはまだ未婚で親と同居しており,今後の動向については決して楽観できない状況にある. また,同じく70年代から80年代にかけて調査対象地で展開した地域女性の教育文化運動については,60年代から70年代にかけての都市化の過程で地方から上京し,家族を形成して定着した女性が主たる担い手になっていたことが明らかになった.同時に,彼女たちの活動が文化センターやPTAなどの社会教育行政によって支援されていた事実も確認された.と同時に,彼女たちの多くが最初から仕事を継続していたり,子育て後に再就職をして現在に至っているという現状が明らかになった. さらに,今回明らかになった最も重要な知見は,80年代以降新たに流入した人口がすでに調査対象地の半数近くを占めるようになっているという事実である.彼らは大都市東京の構造変動との関連で新たに流入してきた人々であり,旧来からの住民たちがつくり上げてきた地域活動には,現在までのところほとんど接触をもっていない.このことが神輿の将来が楽観できないことやかつての地域女性の活動の蓄積がどのような意味を残しうるかという問題と関連してくる. 都市コミュニティにおけるこのような社会的活動の世代的な蓄積と展開の事実をふまえた,都市政策の社会学的な視点からの評価と再検討が求められるのである.
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