本研究では、日本の福祉国家の特質を日本・オランダの家族政策(特にチャイルドケアに関する政策)の比較を通じて検討することを目標とした。日本の戦後における家族とチャイルドケアに関する政策の動向のパターンには政策的転換とさまざまな矛盾が見られる。それは、日本の福祉国家が常に、社会的、経済的、そして政治的要因に対応するように、社会政策を作成していることを読み取ることができる。また、戦後の日本の福祉国家は常に、一方で女性の労働の経済的必要性と、他方でさまざまな財政面と人口統計の要因を図りながら家族とチャイルドケア政策を作成してきた傾向が見られる。 本研究においてチャイルドケア政策の分析をすることによって、いかに女性が日本の戦後における経済的発展のうえで、調整的な役割を果たしてきたのかを明らかにすることができた。そして、また、近年における社会的人口動向の面における変化で女性の福祉国家の再構築における位置付けがさらに重要になっていることが分かる。そして、オランダの最近の家族とチャイルドケア政策の比較から、このような女性と福祉国家の再構築との関連が日本だけでなく、世界的に普遍的な状況であることもわかった。 最後に、日本・オランダの比較を通じて保守的で非常にジェンダー化している福祉国家が直面している矛盾を明らかにすることができた。日本では、性別役割分業がそれを維持してきた福祉国家レジームに少子化や女性の労働、家族、そして結婚に対する意識的変化を通じてさまざまな形で圧迫している。これに対して日本の福祉国家は今後も福祉(特に子供と老人の社会ケア)の拡大に力を入れなければならないであろう。
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