本研究の課題は、地域情報化を進めている地域における地域住民が具体的に生活の場においてどのようなネットワークを活用して、自らの文化資源の再生産を行っていくことを実証的に解明することを目的としていた。そのため、理論研究として(1)メディアに関する研究、(2)地域文化論などの文化資源に関する研究、(3)地域ネットワークに関する研究を進めてきた。そこにおいて、地域ネットワークを形成するものとして伝統型の祭りなどが地域文化の重要な文化資源として活用されているとともに、他方では、都市型社会の進行の中で全く新しい地域住民のネットワークが地域の文化資源として重要な役割を果たしつつあること、さらにそこにおける地域メディアの役割が重要なことを明らかにした。その基本的な枠組みは、近著「高度情報化社会におけるネットワークと地域文化」の中で検討した。そこにおいては、伝統型の祭りを軸としたネットワーク形成が地域文化として重要な役割を果たし、その文化資源の活用が地域の高度情報化と深く関わり合った事例などを紹介した。しかし、他方で都市型社会において旧来型の共同性に基礎をおいたネットワークの形成は、困難になりつつある。そこで注目されるのが、「地域共同管理」という考え方であった。これは、都市型社会においては、共同性の根拠が存在をすること、そして、現実に様々のネットワークが形成されていることが研究の中で明らかになった。 本研究は、このような理論的枠組みをふまえ、地域情報化を進めている年を選定し、そこでのネットワークと文化資源に関する資料を収集し、その関係性を実証的に明らかにすることを目的としていたが、研究代表者が長期病気療養のため、実証的研究を進めることができなかった。
|