研究概要 |
本研究の目的は,ある高等学校の総合学科を対象に,その設置から3年間の過程を追跡調査し,高等学校総合学科がどのようにしてわが国の高校教育の中に定着していくかを探ること。調査の対象は,1998年度に茨城県初の総合学科を設置した同県立八千代高等学校。研究の方法は,以下の通り:1.同校に関係する資料の収集/2.関係者へのインタビュー/3.同校の生徒に対する3回の調査/4.同校近在の中学校の生徒に対する調査。研究で解明を試みた点は以下の通り:1.総合学科制度化の過程/2.第1期生から第3期生までの総合学科入学生徒の変化/3.総合学科第1期生の入学後3年間の変容/4.中学生の総合学科に対する認識と評価。 研究の成果は,次の通り:1.同校の総合学科は,それに先立つコース制の問題点の克服を目指して制度化された。その点で総合学科の制度化の過程は,学校の枠づけを弱める過程としてみることが可能。/2.設置後3年間の入学生徒の変化は,中学校時代,リーダー経験のある活動的な生徒の割合が増加したこと。その点で,総合学科はアトラクティブ。/3.第1期生の3年間の変容で注目に値するのは,総合学科のシステムを意識し,それを受け入れている者とそれを受け入れていない者とに分化する傾向にあったこと。しかし,全体として生徒は,選択制を利用して資格の取得に努力。また,総合学科に入学したことを満足して受けとめるように変化。その点で,総合学科はポジティブな教育効果を保持。/4.中学生は,総合学科を,それが選択制である点と,進路形成において可能性を持つ点において評価。しかし,認識は希薄。その点で,広報が総合学科の課題。
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