研究計画に基づき、第三年度に当る本年度は魏晋南北朝時代の公文書行政と官制運営実態の把握に取り組んだが、初年度の研究内容である公文書の種類と機能の整理のための諸種史料の調査、収集、二年目の研究内容である具体的書式の復元になお遺漏があると思われたので、その補充作業も続行した。 具体的には、研究補助を使用し、正史など諸種文献から、公文書を表示するとおもわれる用語の内、初年度に収集した表・奏・啓・辞等の外、令・移・牒・牋・状・列・辞等の語を抜粋し、分類整理してカード化するとともに、出土文書・墓誌銘等についても、公文書関係の文章の調査・整理を行った。 以上の作業の外、魏晋南北朝における公文書の全体像を把握するために、『文選』・『文心雕龍』・『文苑英華』等における文書関係記事を調査し、魏晋南北朝公文書の種類や体系に関して、ある程度の認識を得た。その結果はすでに公表済である。 なお、三年間の研究によって明らかになった魏晋南北朝公文書の全体像について、報告書を作成した。そこで考察した公文書は以下の通りである。 下行文;詔 令 符 上行文:表 奏 啓 牋 平行文:関 刺 解 牒 状 列 辞 この他、『宋書』礼志所載監国儀注の詳細な分析、吐魯番文書所見北涼文書の検討も行った。これらも上記報告書に収載した。 本年度の研究計画である公文書行政と官制運営については、上記諸種文書の交付受領の関係を中心に、具体的にいかなる文書がいかなる機能を有し、その機能がいかに官僚制を動かして行くかについて、概要を確認することができた。これも報告書に論述している。
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