研究概要 |
筆者は、前1世紀に小アジアで土着王国のポントスが起こした反ローマの戦争(いわゆるミトリダテス戦争)を長らく研究の対象としてきた。しかしながら、この戦争だけを対象としていたのではローマの小アジア支配を総合的に理解することはできないので、この前の時代におけるローマと東方世界との接触をも視野にいれて、この3年間研究をすすめてきた。 とりわけ、ミトリダテス戦争によって小アジアの土着村落の住民の状況にどれほどの変化があったのかを初年度は考察し、「ヘレニズム土着王国の反撃-ポントス国王ミトリダテス六世と土着農民の場合-」と題して発表することができた(『岩波講座世界歴史4』岩波書店1998年所収)。 ついで、2年目はローマの小アジア支配の先駆となるギリシア本土の支配状況について考察した。対象としては前3世紀にスパルタで活躍した国王ナビスを取り上げ、彼の実施した固有の政策とローマの外交政策との対立を取り上げた。これは「ローマ帝国の拡大と王たちの抵抗-ナビスとミトリダテス-」と題して発表することができた(『古代地中海世界の統一と変容』青木書店2000年所収)。 3年目は「古代地中海世界における海賊」についての研究に取り組んだ。まだ論文にするまで研究がはかどってはいないが、近いうちにまとめる予定である。あわせてL.Ballesteros-Pastor,Mitridates Eupotor,rey del Ponto,Granada,1996ならびにJ.et L.Robert,CLAROS I:Decrets hellenistiques,Paris,1989を読み進めた。
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