本研究は、「口語に浸透した古記録・古文書の語法研究」と題して、従来文章語と考えられてきた古記録・古文書の中に口語へ影響を与えた語法(「被成(なさる)」と「(さ)せらる」〔尊敬〕)があることを示し、その語法がどのようにして定着していったかを明らかにしたものである。▼「被成(なさる)」の用例を、様々なジャンルの文献から捜し出し整理するとその使用状況に偏りが見られたた。その結果、「被成(なさる)」は古記録・古文書の世界で育まれ、中世後期に敬語として口頭語へ浸透していくのが判明した。このことを「『被成(なさる)』の系譜」と題して述べた。▼次に、「被成(なさる)」の補助動詞化がいつ頃現れるかを調査した。平安・鎌倉時代の「被成(なさる)」はともに使用される語句が固定化している(例「被成御奉書」「被成下文」)が、徐々に「被成」の取る語句が広がっていき、室町後期になると色々な語句と結びつくようになる(例「礼ヲナサル」「御感ヲナサル」)。その後補助動詞化する。補助動詞化の例としては、『天文日記』1552年の「就被成」、『北野天満宮目代日記』1560年の「御取被成」等が早い例である。このことを『被成(なさる)』の展開」と題して述
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