研究概要 |
近年の韓国での漢字の正式使用化などからも伺えるように,二十世紀半ばを機に一度は崩壊に向った漢字圏は(ベトナムを除き)最近,「新漢字圏」として復活の兆しを見せている。そこで,この新漢字圏の実態を情報理論的な手法を用い,文字単位集合を対象にして,定量的な解析を試みた。同時に,それは姉妹版の『現代漢語の漢字字形に関する情報理論的研究』で得た,日中の新字体の差異に関する研究を継ぐものでもある。尚,概要はほぼ以下のとおり。 ○第1章では,検字法や部首分類や文字単位(象形や指事の類)の現行の日中両語文での差異を,字形の空間的配置にまで踏み込んで調べた。 ○第2章では,曾て東アジア大陸全域に統一実体を提供していた繁体字の,現在の状況について,東南アジアからオセアニアの地域に互る華僑移民の現代史の一部にも踏み込む形で調べ考察した。 ○第3章では,東アジアに分布する非漢字系の固有表音文字や漢字との間での共通字形率を調べ,それを史的関係が比較的明瞭な欧州系の諸文字間の共通字形率と比べることによって,これが文字集合間の同源関係の指標になり得る可能性を考察した。 ○第4章では,現在の韓国漢字を例に,繁体字の文字単位集合の抽出とその対称型の分布を調べ,日中両語文の漢字集合と比較した。いずれも2000字前後の集合が対象である。
|