研究概要 |
エリザベス朝演劇が、イタリア・ルネッサンスから受けた影響については、誰もが認めるところである。1558年から1603年の間に、イタリア語から英語に翻訳され、英国で出版された書物は約300冊ある。それらについてのデータ収集と分析を行うとともに、初版本のpreliminariesにあたった。ところが、約300冊の翻訳のうち、戯曲はたった6作品しか訳されていない。6作品とは、George GascoigneのJocasta(1573)とSupposes(1573),Henry ChekeのFreewyl(1573?),George WhetstoneのPromos and Cassandra(1578),Anthony MundayのFedele and Fortunio(1585)そしてJohn Dymokeが訳したといわれているIl Pastor Fido(1602)である。本研究は、なぜ戯曲の翻訳がこのように少ないのか、また、1,2の例外を除き、今まであまり省みられることのなかった、これらの作品の果たした役割を考えた。エリザベス朝の劇作家が、出版活動を通して、イタリアの文化とどのような関わりあい方をしたかを探った。本研究の結果、これらの6作品に加えて、原語のまま英国で出版された、MachiavelliやAretinoの喜劇がエリザベス朝演劇に与えた影響も、きわめて重要であることが分かった。
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