研究課題/領域番号 |
10610533
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
文学一般(含文学論・比較文学)・西洋古典
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
安村 典子 金沢大学, 工学部, 教授 (20293376)
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研究期間 (年度) |
1998 – 1999
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研究課題ステータス |
完了 (1999年度)
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配分額 *注記 |
2,900千円 (直接経費: 2,900千円)
1999年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
1998年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
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キーワード | 語りの手法 / オデュッセイア / デーモドコス / 入れ子構造 / ホメーロス風讃歌 / アポローン讃歌 / ヘルメース讃歌 / 円環構造 / テュポーン |
研究概要 |
『オデュッセイア』第8巻においてデーモドコスによって歌われるアプロディーテーとアレースの情事の顛末は、従来『オデュッセイア』の筋とは本質的な関わりをもたない、娯楽的要素の強い挿話として取り扱われることが多かった。しかしこの部分の語りの手法を検討することによって、この歌が「入れ子構造」の形式をとっており、しかも『オデュッセイア』の主題と深く関係していることがわかった。すなわち「放浪の旅人の正体は何物か」というテーマでデーモドコスの第一,第三の歌と関わり、「不利な条件の下で妻を奪い返す」という点で、『オデュッセイア』全体のライトモティーフと関わっていることが明らかにされた。 また『ホメーロス風讃歌』第三番の『アポローン讃歌』においても「テュポーンの物語」は伝統的に、本筋から離れた挿入物語としてとり扱われてきた。しかし雌蛇の話、ヘーラーの出産物語が、このテュポーン物語を中心とする「円環構造」をなしており、内容的にも本讃歌全体の中で、きわめて重要な部分を形成していることがわかった。 『ホメーロス風讃歌』第四番の『ヘルメース讃歌』においては、ヘルメース神の多岐にわたる権能が螺旋状に配置され、その語りの手法自体が、狡知にたけた早業の神ヘルメースを巧みに表現するものであることが解明された。 以上のように、初期ギリシア文学の作品に見られる特異な「語りの手法」を細かく検討することにより、その部分の文学的価値、並びにその部分と作品全体との関わりが解明された。
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