研究概要 |
日本における政党システムの時系列の変化を1972年から1996年にかけての24年間にわたり、世論調査データを中心に分析した。それらのデータ分析の結果、1993年の衆議院選挙で自民党が政権の座から転落し「55年体制」が崩壊した時点以前に、日本の政党システムは1986〜87年頃にイデオロギー的な対立軸が弱くなっていたという知見を得た。また、「55年体制」崩壊後の1996年の時点になると、有権者の意識においては「55年体制」時代から存続する既成の政党が何らかの組織を通じて投票への動員をかけることが出来る有権者の比率は46.3%に低下しており、53.7%の有権者がそのような組織的な間接的絆を政党と持っていないことがわかった。その53.7%の「組織化されていない」有権者が、50%を越える無党派層と大きく重複することも判明し、無党派層の増大が政党の従来のあり方に変化を迫っていることが明らかになってきた。 また、それと同時に、1990年代の日本の政党システムは政党再編成(partisan realignment)には至っておらず、1996年の時点ではまだ過渡期であると考えるか、もしくは政党編成崩壊(partisan dealignment)と呼ぶべき状態にあることが明らかになった。 これらの研究成果は、1998年度のアメリカ政治学会において報告したほか、Waseda Political Studies, March 1999, とWaseda Political Studies, March 2000に論文として掲載した。 あつかったデータは、財団法人・明るい選挙推進協会が国政選挙後に実施している全国世論調査データと、国内外の研究者が実施した学術的全国世論調査データである。後者としては、1976年の衆議院総選挙の前後に実施されたパネル形式のJABISS調査(研究者:綿貫譲治、三宅一郎、公平慎策、Bradley Richardson, Scott Flanagan)、1983年の参院選後と衆議院選挙の前後に実施されたパネル形式のJES調査(研究者:綿貫譲治、三宅一郎、猪口孝、蒲島郁夫)ならびに1996年の衆議院総選挙の前後にパネル方式で実施されたJEDS96調査(内田満、林文、谷藤悦史、田中愛治、池田謙一、西澤由隆、川上和久、Bradley Richardson, Susan Pharr, Dennis Patterson)の世論調査を対象とした。また、補足的に読売新聞社と朝日新聞社が定期的に実施している全国世論調査のデータも補足的に分析し、無党派層の増加が時系列にはどのように変化したのかをとらえた。
|