研究概要 |
本研究は狭義銀行制度の効率性に関する議論を,理論的モデルを構築することにより厳密な形で行うことを目的としている. 現行の部分準備を基本とした銀行制度では,銀行のバランスシートにおける資産側と負債側の流動性が合っていないため,各銀行に内在的な不安定性が存在するのであるが,最近は,情報技術革新に伴い,金融機関がネットワークを構成するようになると,金融システム全体の安定性が議論の中心になってきている.銀行が破綻したときに,普通の会社に適用される破産法等を適用できない理由として,銀行の公共性が一般に指摘される.特に,銀行のネットワークが決済システムとして機能しており,情報技術の高度化も手伝い,多額の資金が一瞬のうちに移動している状態では,1つの銀行の破綻が決済システム全体を崩壊させてしまう危険性も否定できない.決済システムは経済における公共財と考えることができるので,決済システムが崩壊する危険性があるときは,公的な介入および規制も正当化されることになる.しかし,どのような形の公的介入および規制が望ましいかという議論については,我々のコンセンサスは,まったく得られていないのが現状である.本研究は,このような目的意識で公的規制のあるべき姿について分析を行ったものである. 本研究において得られた結果として,従来の議論とは異なり,狭義銀行制度が資源配分の効率性を達成するためにも望ましいことが分かった.本研究においては,この分析結果をふまえて,21世紀にふさわしい銀行制度のあり方も提言している.
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