研究概要 |
本研究における不均衡(「個別経済計画が整合性を欠いたまま運営され続ければ、やがて破綻・崩壊に至る」)動学の構造は以下のように把握される。自然人、自然人の結合体としての法人、銀行・政府が貨幣・実物・貸借等をめぐる計画と実行とその破綻・改編について、所有権移転の有無・使用期間・支払い方法・納期・引渡し時期・先物取引(数量・価格)・保険・オプション取引・ローン・担保・優先返済順位などの諸要素を考慮した契約の総体を確定する。動学的展開は以下のように展開される。総契約の確認・清算・部分的返済・破産手続・返済の繰り延べ・財貨金融資産等の引渡しを検討し、清算結了したあとの更正過程に入った自然人と法人の所有権確認とその他の自然人・法人への転移を終えた時点における資産保有量と諸契約を確定しておく。そのあと、市場は、新貸借を踏まえて、需給計画の展開と実施の策定にはいる。前期の該当市場で超過需要であったか、超過供給であったかによって、今期の価格・利子率は、前期の価格・利子率と前期の需給逼迫度の関数として、表出されるものと考える。その価格・利子率を用いて、ひとまず仮の需要と供給が申し出られる。その結果、実際の需給はshort side principleで定められる。時間の進行とともに、事態は新取引を含む総契約が展開され、それらの清算に入り、次の新取引の準備過程に進む。諸経済主体の経済計画のマッチングを探索・適応する場が市場であるが、それらの計画の整合性が過剰計画・過小計画という形で崩壊する場合が訪れる。一般不均衡理論の準備は、均衡・成長・景気変動を包摂する以上に、崩壊からの再出発を用意する理論にならざるをえないであろう。以上のような諸階梯をモデルとして記述したものが「不均衡動学の経済表」、北海道大学『経済学研究』48巻4号(1999)、23-40である。■その他の研究実績は、「検討:借地借家法の中立性」、Discussion Paper NO.481,99年6月、「借地借家法の中立性命題の再検討」、『住宅土地経済』NO.35(2000),18-27、「多重共線性問題と一般化された逆行列について」、『オイコノミカ』、March 2000『オイコノミカ』、36巻3号4号(2000)、1-22であることは、研究成果報告書に述べた通りである。■今後の研究展開:財需要の予測と加速度原理による資本形成原理を展開し、資本財市場・消費財市場・労働市場の需給アンバランスをShort-side Principleで解析し、価格と財蓄積の動学分析を、原始的とはいえ、これらの基本要素と構造を組み込んでパラメタ-を与えて、不均衡時の生産主体・消費主体の意思決定モデルを、Basic Programmingを用いて開発する研究を機会を捉えて公開する予定である。
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