研究課題
基盤研究(C)
I部の「通貨統合移行で強まるEU経済構造の変革」では、次の点を明らかにしている。すなわち、第1に、90年代には、EU経済は輸出依存型の成長を果たしてきたが、通貨統合により域内需要型の経済成長に転換すると予測されたが、アジア通貨危機、ロシア通貨危機、中南米通貨経済危機、日本の縮減などから減速が規定された。しかし、第2に、EU構成国に経済の跛行性があり、北欧・南欧の経済成長が高く、中核部分の成長が低いことが挙げられ、中核部分は、折からのユーロ安で外需依存型の成長を達成した。第3に、EU構成国間の成長格差は、EU産企業の直接投資が規定している姿を生産コスト直接投資の展開から明らかにした。II部の「EUの対中東欧直接投資の展開と産業空洞化の懸念」では、市場統合と通貨統合で進展するEU経済の過程を脇に置きながら、EU加盟の基礎となった欧州協定・CFETAの展開を踏まえ、直接投資の展開を検討し、次の点を明らかにした。第1に、欧州協定は10年間でEU・中東欧間で自由貿易を達成し、体制転換後の中東欧をBU経済圏に取り組むこと、CEFTAは中東欧それ自体の自由貿易協定であり、欧州協定を補完するものである。第2に、欧州協定は見事に体制転換を果たした中東欧諸国をEU経済に包摂した点を貿易関係から明示化した。第3に、EUと中東欧を統合的に見た際に、CEFTAの役割は限定的であり、「ハブ・アンド・スポーク」の関係である欧州協定が重要な点である。第3に90年代にEUとの貿易関係を取り結んで増加していったDAE(ダイナミック・アジア)と中東欧では、国際分業関係でDAEの方が資本集約的、先進国型であったが、95年以降になると中東欧も資本集約、先進国型の輸出構造を持つように転換した。第4に、このことを規定したのはEU産業企業が展開した直接投資であったこと、直接投資が中東欧の経済成長を支えたことなどを明らかにした。第5に、EUでは産業立地問題が登場し、労使交渉で譲歩交渉が展開され、産業空洞化が懸念された。
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日本経済の現状2000年版(日本経済研究会編)
ページ: 180-200
Research group of Japan Economy ed., Present Status of Japan Economy 2000
日本経済の現状1999年版(日本経済研究会編)
ページ: 87-111
Research group of Japan Economy ed., Present Status of Japan Economy 1999