研究概要 |
水戸康夫(1998)は、対インド直接投資フローの受け入れ許可額、件数において、韓国企業が日本企業に比べて相対的に多い理由について、ゲームを用いて明らかにしようとした。韓国企業とインド政府をプレイヤーとし、韓国企業がインドに進出するゲームを示し、次に韓国企業と日本企業をプレイヤーとして、インド進出のゲームを示した。その際、韓国企業のインド進出に対して批判的な立場、つまり後発多国籍企業である韓国企業はリスク愛好的な選択をするため、インド進出をするとして、ゲームを行った。 水戸康夫(1998)の特徴は、直接投資の説明にリスク愛好的な選択を取り入れたことである。既存有力理論は、暗黙的にリスク中立的な行動を想定しており、そのため、日本企業の方が経営資源を保有していると見られる状況において、韓国企業のインド進出と、日本企業の進出しないことの説明は困難であった。この困難を解決するための方法の1つが、リスク愛好的な行動の導入である。 水戸康夫(1999)は、多項ロジット・モデルを用いて、日本企業の立地選択要因の分析を行った。先行研究では、企業は自由に立地を選択できると想定しているが、そのような想定は現実を反映しておらず、出資比率100%の子会社のみを対象とすることで、自由な立地選択という条件を満足させた。1994、95,96年にアジア11か国・地域に進出した、出資比率100%の製造子会社351社に対して、多項ロジット・モデルを適用した。予備的推定では、「ワーカー賃金」「名目GDP」「インフレ率」「実質GDP成長率」を説明変数とし、本推定では「インフレ率」のみを説明変数とした。「インフレ率」が有意な説明変数であることから、アジア諸国が日本企業を誘致しようとすれば、インフレ率を低下させるべきことを指摘した。
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