研究課題/領域番号 |
10630084
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
財政学・金融論
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
板谷 淳一 北海道大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (20168305)
|
研究期間 (年度) |
1998 – 2000
|
研究課題ステータス |
完了 (2000年度)
|
配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
2000年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
1999年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
1998年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
|
キーワード | 財政再建 / 動学ゲーム / ナッシュ均衡 / 利益団体 / 公共財 / フラー・ライダー / 徴分ゲーム / オープン・ループ / クローズ・ループ |
研究概要 |
理論的な成果は"A Dynamic Model of Fiscal Reconstruction"および"Fiscal Reconstruction,Taxation and the Size of Government"という2つの論文にまとめらえた。前者の論文はEuropean Journal of Political Economyに2001年の秋に出版される号に掲載されることが決まった。後者の論文をつくり、現在、投稿先を検討中である。 これらの2つの論文の成果は次のようにまとめられる。 (1)各利益団体の戦略集合として、クローズループ戦略を採用する時、オープンループ戦略にくらべて、財政再建の状況は悪化する。また、クローズループ戦略として、線形マルコフ戦略だけでなく非線形マルコフ戦略にすると、財政再建は改善される余地があるが、オープンループ戦略よりは状況は改善しない。また、いずれの戦略をもちいるにしろ、パレート最適経路を達成することはできない。以上の理論的成果は次のことを意味する。財政再建を行う時、一度決まった財政再建のプランを後で変更することを許すような柔軟な財政再建プランは一般にうまくいかず、国債の高水準な累積残高をもたらす。 (2)財政再建を成功させるためには、後での変更を認めないような修正の手続きがきわめて厳しい法律を制定したり、きわめてつよい権限を財政当局に長期間保持させるような予算制定制度をデザインする必要がある。 (3)消費税増加によって歳入の増加をはかることには次のようなメリットがあることがわかった。歳入を増加により財政再建に貢献するだけでなく、利益団体が既得権益から得られる便益の機会費用を増加させる効果がある。その結果、消費税率の増加は、利益団体を財政再建に対してより協力的にさせ、自らの既得権益をあきらめさせることを促進する効果がある。その結果、財政再建の速度が増加するばかりでなく、国債の累積残高も低水準へと導く。 (4)国債の利子率の増加は財政再建ための財政的負担を増加させるけれども、利益団体が既得権益を長期間保持することの機会費用を増加させる効果がある。その結果、このような機会費用の増加は利益団体を財政再建にたいしてより協力的な方向へと導く。すなわち、利益団体はよりはやい段階で彼らの既得権益を手放すようになる。 (5)本年度は、利益団体の行動と財政再建の成功の水準を計量的に推定しようと様々な計量的なモデルを構築したが、残念ながら、上で示されたような理論的成果を確認するような計量的な結果は得られなかった。特に問題な点は、利益団体の既得権益を保持する行動の強さをあらわすためには、どのような変数(すなわち、代理変数)が最も適切であるかという問題に直面した。この問題は今後の研究課題としたい。
|