1952年に施行された会社更生法の機能を実証的に検証することが本研究の目的である。とりわけ、会社更生法による更生計画が経済合理的な内容になっているか否かを、オプション評価理論を応用し、資本市場での評価の観点から検証すること、データとして官報で公告される会社更生事件の内容、とくに更生計画のデータをデータベース化して、用いていることが本研究の特色である。 分析の中心であるオプション評価モデルによる分析は、企業の自己資本(株式価値)は、企業資産を原資産とするコール・オプションとみることができるという点を利用し、更生会社の資本の評価に応用したものである。ただし、多くの場合、それは概念レベルにとどまり、実際に応用した例はほとんどない。本研究は、実際に利用できるデータを用いて分析している。上場会社23社について、上記の分析を行った。Black-Scholesモデルを用い、Mertonによる自己資本ボラティリティーと資産ボラティリティーとの関係式と連立させ、非線形連立方程式の解を数値解析によって求めた。数値解析の方法面で工夫した結果、すべての事例について解が収束し、推計値が得られた。ただし、基準日のバランスシートデータは5社分しか利用できなかった。それら5社については、推計値がバランスシートの資産額を下回るものが3件、ほぼ同一のものが1件、上回るものが1件であった。下回ったものは、資産額を過小評価したものと言え、それは新株式の過小評価を意味し、よって新株主に有利な条件となる。これは、会社更生の公平性の面での問題を示唆している。
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