研究概要 |
旧東独地域に自動車製造プラントを設けたドイツ自動車メーカー,VW社及びオーペル社(米GM社ドイツ法人)のケースを取り上げ,国際比較研究を実施した。その場合に,以下の3点が重視された。まず第1に,旧東独を含む中・東欧経済圏を競争の新しい舞台として鎬を削る日独(欧米)自動車企業の戦略展開の新しい方向性とその違いを,「リーン生産システム」のimplementationとmodificationのパーターンの比較に求め,その相違性を究明すること,さらに第2に,経済的に自立的発展を模索する中・東欧諸国での日独(欧米)自動車企業の「トランス・プラント」や「リーン生産システム」導入が現地産業・企業の発展に対して,とりわけ経営・生産システムや労使関係に対して,いかなるポジティブ及びネガティブな影響を及ぼし,現地にいかなる問題を投げかけているのかを比較研究すること,また第3に,このテーマに関連して,欧州での学術的論調ないし論議を整理し,それを踏まえて日欧間での議論の共通性と「ズレ」を浮き彫りにすること,以上である。そして,これらの研究課題を解明する作業において,旧東独地域に旧西独の自動車メーカー,VW社とオーペル社が設けた自動車製造プラントや,それらと関連して旧東独地域に進出した旧西独自動車部品メーカーの製造プラントとリンクして,旧東独自動車産業がその解体・民営化の後に下請産業としての再編成される過程について研究を進めた。そうした中で,旧東独自動車産業・企業の民営化の問題を避けて通れなかったことから,「ドイツ統一」後に実施された民営化を検討し,とくにそれを遂行した「信託公社」についての研究を行った。自動車産業に関する研究の成果は,まだ部分的に公表したにすぎない。今後,逐次に公表する予定である。民営化に関する研究成果も,部分的に公表したが,これについても未発表部分を順次に公表する予定である。
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