研究概要 |
昨年度の研究において,同変加群のホモロジカルな振る舞いについての基礎的な研究についてはほぼ目標を達成した。本年度は,この研究の技術的基礎部分を補う形で書いた英文モノグラフを公表した。このモノグラフには,Auslander-Buchweitzによる正準加群を持つCohen-Macaulay環上のCohen-Macaulay近似の理論と,Ringelによる準遺伝的多元環のΔ-good近似の理論を融合する形の理論が含まれており,可換環論の研究者のみならず表現論の研究考も対象にしている。このモノグラフの公表も本研究における最大の成果の一つである。 また,昨年度に引き続いて,正標数の代数的閉体上の連結簡約群Gが多項式環Sに線型に作用し,SがGの表現として良いフィルター付けを持つとき不変式環S^Gは強F正則になるという定理の強化に努めた。多項式環が良いフィルター付けを持つという条件は標数0では必ず成立し,Zariski open conditionであるので,標数0ではS^Gは強F正則型となる。強F正則型は有理特異点よりも強い条件なので,これは良く知られたBoutotの定理には含まれない。 一方,正標数における不変式環のGorenstein性についての研究を深めていくには,正準加群の振る舞いを調べる必要がある。そのため,同変固有射に関するGrothendieckの双対性と,その前提となる同変捻じれ逆像関手の構成を行なった。さらに,これを用いて,標数0でのKnopの不変式環のGorenstein性に関する結果をある程度正標数に移植することに成功した。これらの研究については,国内外のシンポジウム等で発表を行い,概要を印刷公表した。 他に,平坦射によるF有理性の振る舞い等について一定の成果をあげ,印刷公表した。
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