研究概要 |
この研究は,特殊な代数曲線の個性的性質を調べ,それを符号理論へ応用しようとの目論みで始められた.よく知られたように,特異点を持たない曲線は,その関数体で完全に定まってしまう.従って,曲線の特殊性は,その上の関数のありかたの特殊性として述べる事ができるはずである.実際,Gonality, Clifford index, Luroth半群,Weierstrass点等の曲線の特殊性を表示しうる量や対象は,特別な関数の存在に基礎を置いている.このような意味を込め,代数関数の存在様式の研究という,少々耳慣れない言葉を研究の標題として選択した.この2年間で得られた研究成果は,おおまかには次の3つの方向に分類される. 1.特異点を持つ曲線での特殊線形系に関するもの, 2.特異点を持たない代数曲線上での完備特殊線形系の分布, 3.代数曲線論および代数幾何的手法の符号理論への応用 である.方向1は,非特異曲線上の関数存在の特殊性として最も素朴なGonalityの概念について,特異点を持つ曲線ではどのような理論展開が可能なのかを追求したいという試みであり,その最初のステップとして,超楕円曲線に対する場合を取り扱った.2については,超楕円曲線を除けばある意味では最も特殊な族である平面非特異曲線をとりあげ,それらの上の特殊線形系の存在限界に関するMax Noetherの定理の下で境界上に位置する特殊線形系の特徴付けについての新しい証明を,"base-point-free pencil trick"の変奏という着想に基づいて与えた.さらにこの手法により,境界に対応する特殊線形系のなす多様体は既約である限り非特異であることも示し得た.方向3はこの研究課題の後半部分"・・・その符号理論への応用"に関わる内容である.主要には,曲線上の2点に関するWeierstrass半群,あるいはWeierstrass gap集合についての研究成果の応用として結果が得られている.
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