研究概要 |
最近の低次元多様体論は幾何学の枠を大きく超えて群論,関数論,力学系,そして数学以外の数理物理,計算機科学等の様々な分野との密接なつながりが見出されてきている.その中には,例えば,双曲的曲面のTeichmuller空間の座標を与えるTrain Track(Thurston),双曲的三次元多様体の理想的胞体による標準的分割(Epstein-Penner),ヤング図形によるヘッケ環の表現の構成(Jones),automaticな群の理論(Thurston),Hakenによる正規曲面の理論といった多くの(一般には非常に巨大な)組合せ的構造が見出されている.これに関して,最近の低次元多様体論の発展,コンピュータの発達等によりこれらの組合せて的構造を直接,具体的に取扱うことがかなり可能になってきているように思われる. 以上のような状況に鑑み本研究では特に2,3次元の多様体の構造を特に幾何的,組合せ的な観点から調べてゆくことを目指した.具体的には,次のような話題についての研究がなされた. ・三次元多様体,結び目の構造をHeegaard分解を通して(特にRubinstein-Scharlemannによる'graphic'と呼ばれる概念を用いて)研究する,その結果として結び目の結ばれていないトンネルの分類などに関して有効な情報を得る. ・三次元多様体の双曲構造を三次元多様体の三角形分割を用いて研究する.特に非常に単純な双曲構造から出発してそれを変形することにより2橋結び目の外部空間に双曲構造を入れる. ・三次元リーマン多様体のある種のリーマン計量のなすModuli空間の性質とその三次元多様体の幾何構造の間の関係について調べる. ・三次元多様体の与えられたHeegaard分解の接着写像を,標準的なDehn twistの積に分解するための(計算機で取り扱うことの出来る)アルゴリズムの研究.
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