研究概要 |
超対称ゲージ理論の非摂動的力学と超弦理論の双対性との関連という視点から,高次元超対称ゲージ理論におけるインスタントン方程式モジュライ空間と超対称サイクルの幾何学に関する研究を行った.これは,4次元多様体におけるDonaldson不変量の一般化という視点からも興味あるものである.高次元におけるインスタントン方程式は,いわゆる特殊ホロノミー群をもつ多様体において自然に定義できる.また,そのような多様体には共変的に定数となるスピノル場が存在し,それを用いて超対称サイクルの概念が導入される. 最初の論文ではN(>4)次元インスタントンのモジュライ空間コンパクト化の問題を考える際に,特殊ホロノミー群をもつ多様体上の(N-4)次元超対称サイクルが重要な役割を果たすことを一般的に論じた.その後,次の論文において,その具体例としてEgudhi-Hanson空間の自然な高次元化と見なされるSpin(7)ホロノミーをもつ8次元非コンパクト多様体を考え,その上の球対称な8元数的インスタントン方程式の解の構成を行った.しかし,このモジュライ空間の幾何学の理解は未だ不十分であり,新しい幾何学的不変量が果たして得られるかどうかは今後の課題である. なお,最近の研究で,昨年度研究した円周上にコンパクト化した5次元超対称ゲージ理論に関して,より一般的な状況の下での理解が進んだ.これによって4次元位相的ゲージ理論の幾何学を超弦理論における双対性(ミラー対称性)とインスタントンの幾何学から,より深く理解できる可能性がでてきた.この結果については,現在,論文を準備中である.
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