研究概要 |
以下では,コンパクトで連結で,向き付け可能な3次元多様体で,境界を持たないものを「閉多様体」,境界を持つものを「有界多様体」とよぶことにする.種数gの「ハンドル体」とは,輪環体(中が詰まったトーラス)のg個のコピーの境界連結和である有界多様体である. さて,閉多様体は2つの同じ種数のハンドル体に分解されることがよく知られている.この分解はHeegaard-分解とよばれ,閉多様体の研究に際して極めて重要な役割を果たしている.一方,有界多様体に関しては,同じ手法ではハンドル体といくつかの2-ハンドルとよばれる球体になるが,1970年にJ.S.Downigが有界多様体も2つの同じ種数のハンドル体に分解できることを示した.さらに,L.G.Roelingは,境界が連結な有界多様体の場合に,このハンドル体分解に関していくつかの基本的な定理を示した. 本研究では,これらの事実を基に,以下のことを示した: (1)Downigの結果を,少々変形し,より使い易い形にして紹介する. (2)これを基に,Roelingの結果を複数の境界を持つ場合に拡張する. (3)このハンドル体分解に対して,Haken-型の定理を,Heegaard-分解に関するCasson-Gordonの一般化の例にならって,定式化し,証明する. (4)このハンドル体分解に対して,球面を固有な円盤に置き換えたとき,自然に考えられるもう1つのHaken-型の定理が成り立つか否かについて議論する.
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