研究概要 |
本研究は,自然現象や工業プロセスに多く見られる自由界面を持つ流れ現象のための有限要素スキームの開発および数学解析を目的として,平成10年度および平成11年度の2ヶ年にわたり行われた。 平成10年度は,密度差の比較的小さい2流体問題に対する有限要素スキームとプログラムを開発した.ここでは数理モデルとして,Boussinesq近似を仮定したNavier-Stokes方程式を用いた1流体モデルを採用した.また,界面は擬密度関数の満たす移流方程式の解の0レベルセットとして定義される.これらの方程式に対し,P2isoP1要素およびP1要素を用いた混合型有限要素スキームを構築した.移流方程式の安定な近似解を得るために,double well potentialを用いた移流方程式を解くことにより,移流方程式の近似解の再初期化を自動的に行うアルゴリズムを提案した. 平成11年度は,表面張力効果を考慮した高密度化,高粘性化を持つ2流体システムに対する有限要素スキームの開発を行った.数理モデルとしては,2つのNavier-Stokes方程式を連立させた2流体モデルを採用した.これに対する弱定式化では,表面張力効果は界面における線積分で表現されるが,その有限要素近似においては,表面張力効果は有限幅を持つ界面領域で定義された局所的な体積力として表現した. 一方,有限要素スキームの数学的解析の一つとして,近似界面の収束性について検討し,擬密度関数の有限要素近似の収束性の仮定の下で,擬密度関数とその近似関数の正値の測度の差のL^p(Ω)-ノルムを評価することで,界面のある意味の収束性をHeaviside作用素を用いて証明した.しかしながら,Navier-Stokes方程式の有限要素スキームと移流方程式の有限要素スキームをカップリングした全体スキームの数学解析等は今後の課題である.
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