研究分担者 |
小室 元政 帝京科学大学, 電子情報科学科, 助教授 (00186818)
磯 祐介 京都大学, 大学院・情報学研究科, 教授 (70203065)
西田 孝明 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (70026110)
高石 武史 広島国際学院大学, 工学部, 講師 (00268666)
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研究概要 |
本研究で得られた成果は以下のとおりである. (1)Conley indexと呼ばれる力学系の位相的な不変量に関して,connecting orbitの分岐の研究に重要な役割を果たすtransition matrixを多重パラメータの族の場合へ拡張した.またConley indexの理論をslow-fast systemsと呼ばれるある種の特異摂動的ベクトル場に対して構築するための第一歩としてslow manifoldがnormally hyperbolicで一次元である場合について周期軌道やヘテロクリニック軌道の存在を示す位相的・代数的な条件を見い出した. (2)ベクトル場のある余次元3の退化特異点からある種のheteroclinic cycleが分岐によって出現することを示した。このことから特にこの特異点からカオス的アトラクタが分岐することも証明できた。 (3)同軸2円筒間を充たす流体の運動について,両円筒が同じ向きにまわる時と,逆向きにまわる時について,平衡解(Couette流)の安定性を数値的に調べた.常微分方程式系に帰着される場合なので,計算機援用証明法が適用できる,その結果,臨界Taylor数を確定でき,局所分岐理論が使えて,いわゆるTaylor渦(定常分岐)と周期解分岐(ある場合には,wavy Taylor渦)の存在が厳密に証明された. (4)カオス的振舞いをする振動子を結合させたシステムで,結合の強さとカオスの強さが拮抗する状態では,数個のクラスターに分かれた状態があたかも安定であるかのようにしばらく続くが,やがて不安定化し,全くばらけた状態となることを繰り返す.このような準安定な状態間をカオスを経由して遷移する現象は,金子,津田,池田らによって「カオス的遍歴」と名づけられた.この研究では大域結合写像(GCM)における「カオス的遍歴」の発生機構を研究した.GCMは対称群の作用に対して不変であることから不変部分空間の階層構造を決定し,それを用いてGCMにおける「カオス的遍歴」は,低次元不変部分空間上で補空間方向に安定なカオスアトラクタが補空間方向に不安定なアトラクタ内部でクライシスを起すことによって生じることを示した.
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